


# 『Queen of the Ring』映画レビュー|女子プロレス映画の到達点
『Queen of the Ring』は、伝説的な女子プロレスラー、ミルドレッド・バークの半生を描いた映画です。
キャスト&スタッフ
キャスト
エミリー・ベット・リッカーズ
ミルドレッド・「ミリー」・バーク
ジョシュ・ルーカス
ビリー・ウルフ
タイラー・ポージー
G.ビル
ウォルトン・ゴギンズ
ジャック・フェファー
フランチェスカ・イーストウッド
メイ・ヤング
マリー・アヴゲロプロス
エルヴィラ・スノッドグラス
ケイリー・ファーマー
ジューン・バイヤーズ
カーラ・ブオノ
ベルタ
ギャビン・カサレグノ
ジョー・ジュニア
アダム・デモス
ゴージャスなジョージ・ワグナー
デボラ・アン・ウォル
グラディス・ギレム
ケリー・バーグランド
ネル・スチュワート
ダマリス・ルイス
バブス・ウィンゴ
マーティン・コーブ
アル・ハフト
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クルー
アッシュ・アビルドセン
脚本家兼監督
アルストン・ラムゼイ
作家
ジェフ・リーン
著者(書籍)
エイミー・スクーフ、アイセン・ロビンス、BD・ガネル、アッシュ・アヴィルドセン
プロデューサー
アメリカで女性のプロレスが違法だった時代、小さな町のシングルマザーが危険をものともせず業界を席巻し、史上初の女性億万長者アスリートとなった。
アメリカのほとんどの地域で女子レスリングが禁止されていた時代に、このスポーツの先駆者となったチャンピオンプロレスラー、ミルドレッド・バークの物語。
『クイーン・オブ・ザ・リング』は、2024年公開のアメリカの伝記スポーツドラマで、女性プロレスラーのミルドレッド・バークを題材としている。脚本と監督はアッシュ・アビルドセン。主演はエミリー・ベット・リッカーズで、バーク役を演じ、ジョシュ・ルーカス、タイラー・ポージー、フランチェスカ・イーストウッド、デボラ・アン・ウォール、カーラ・ブオノ、ウォルトン・ゴギンズらが脇を固めている。
前提
この映画は、革命的な女性レスラー、ミルドレッド・バークの生涯を描いている。
女性がリングに上がることを禁じられていた時代に、ミルドレッド・バークはあらゆる常識を覆した。不屈の精神を持つシングルマザーである彼女は、地下試合からプロレス界の頂点へと駆け上がり、このスポーツ史上初の100万ドルを稼ぐ女性アスリートとなった。懐疑論者、反対者、そして彼女を排除しようとする体制に立ち向かい、バークは史上最長の王者としてその名を刻んだ。彼女は、最も激しい戦いはリングの中だけでなく、世界そのものとの戦いでもあることを証明したのだ。
女子プロレスを扱った映画はいろいろありますが、個人的にはこのジャンルの中でもかなり上位、というか「まず一本選べ」と言われたら、これを選びたいくらいの作品です。
理由は単純で、ちゃんとプロレス映画として面白い。
女性レスラーたちがリングで組み合い、投げ、押さえ込み、意地をぶつけ合う。そこだけでも十分楽しめます。
でも、この映画の面白さはそれだけじゃないんですよね。
そもそもミルドレッド・バークが活躍した時代は、今みたいに「女子プロレス」が普通に存在していた時代ではありません。
女性がリングに上がること自体、変な目で見られていた。
そんな時代に、本当にリングへ上がって、男とも女とも闘って、自分の強さを見せつけていった女性がいた。
その人がミルドレッド・バークです。
この映画、主人公の人生そのものが強いです。
ミルドレッド・バークは最初からプロレスラーだったわけではありません。
若くして母親になり、ウエイトレスとして働いていた普通の女性でした。
ところがプロレスに興味を持って、「自分もやりたい」と思うようになります。
ただ、当時は女性がプロレスラーになりたいと言ったところで、そう簡単に相手にはされません。
そこで登場するのがビリー・ウルフです。
ビリー・ウルフはレスラーを育てていた人物ですが、最初からバークを歓迎したわけではありません。
むしろ「女性には無理だろう」という扱いだった。
ところがバークは、男性レスラーを相手にしても簡単には引かない。
むしろ相手を倒してしまう。
ここがもう、この映画のテーマそのものです。
言葉で「女性だって強い」と言うんじゃない。
実際に組んで、倒して、証明する。
非常に分かりやすいです。
そして、女性格闘やミックスファイトに興味がある人なら、この時点でかなり引っかかるものがあると思います。
ミルドレッド・バークの経歴で個人的にかなり面白いのが、キャリアの初期に男性とも対戦していることです。
今なら「インタージェンダー・レスリング」とか「ミックスファイト」といった言葉がありますが、バークが活躍したのは1930年代からです。
つまり、男女がリングで闘うという光景は、かなり昔から観客の興味を引いていたことになります。
これは今でもそうですが、女性と男性が闘うとなると、どうしても気になるんですよね。
体格差はどうなのか。
力は通用するのか。
本当に女性が勝てるのか。
そういう素朴な興味があります。
当時の観客も、おそらく似たような目でバークを見ていたはずです。
「女性なのに強い」という見世物的な部分も、もちろんあったでしょう。
でもバークは、その視線を逆に利用してスターになっていく。
ここが面白い。
「女だから無理だろう」と見に来た客に、リングの中で結果を見せてしまうわけです。
こういう映画で一番困るのが、レスラー役の俳優がまったく強そうに見えないことです。
衣装だけプロレスラーでも、リングに入った瞬間に「あ、役者さんだな」と分かってしまうと、一気に冷めます。
その点、『Queen of the Ring』はかなり頑張っています。
ミルドレッド・バークを演じるエミリー・ベット・リッカーズは、撮影に向けて身体を作り、実際にプロレスの練習もしています。
これ、大事です。
リングに立ったときに、肩や腕、背中にそれなりの説得力がある。
細い女優が急に強いレスラーを演じている感じではありません。
もちろん本物のプロレスラーと比べれば違います。
でも映画として見る分には、十分に納得できる身体を作っています。
そして何より、女性が相手を投げたり、押さえ込んだり、力でねじ伏せようとする姿がちゃんと画面映えする。
女子格闘映画では、ここはかなり重要でしょう。
ミルドレッド・バークという人の面白いところは、強いだけではないことです。
彼女は華やかな衣装も着るし、スターとしての見せ方も分かっていた。
筋肉があって、相手を投げる。
でも女性らしい華やかさもある。
この組み合わせが非常にいいです。
昔の作品だと、強い女性を描こうとすると、なぜか女性らしさを全部消してしまうことがあります。
でもバークはそうではない。
強いけれど、華やか。
相手を倒すけれど、スターとして美しい。
この両立は、現在の女子プロレスにもかなり通じるものがあります。
女性の強さに魅力を感じる人にとっては、この部分もかなり刺さると思います。
一方で、この映画は単純な「努力してチャンピオンになりました」という話ではありません。
ビリー・ウルフとの関係がかなり複雑です。
彼はバークを育てた人物であり、夫でもあり、マネージャーでもあり、プロモーターでもあります。
つまり、仕事も私生活も全部つながっている。
これは厄介です。
バークはリングの中では強い。
男性レスラーを相手にしても引かない。
でも契約や興行、人間関係となると、腕力ではどうにもなりません。
むしろ、本当に苦しい闘いはリングの外にある。
この辺りが入ることで、『Queen of the Ring』は単なる女子プロレス映画ではなくなっています。
強い女性だからといって、人生のすべてが強くなるわけではない。
そこは結構リアルです。
プロレス好きなら、この辺も楽しいところです。
メイ・ヤング、クララ・モーテンセン、ジューン・バイヤーズ、バブス・ウィンゴなど、女子プロレス史に登場する実在の人物が次々と出てきます。
しかも映画には、本物の女子プロレスラーも出演しています。
トニー・ストームやKamilleなど、現在のプロレスを知っている人なら「あ、この人!」となるキャストもいます。
プロレスのシーンって、技を掛ける側より、実は受ける側が重要だったりします。
本物のレスラーは、相手がどう動けば技がきれいに見えるかを知っています。
だから主演女優が技を掛けても、それなりにちゃんとプロレスに見える。
ここは『Queen of the Ring』のかなり強い部分です。
この映画を見ていて面白いのは、「女子プロレスが昔から当たり前にあったわけではない」ということが分かる点です。
今の感覚だと、女子プロレスラーがいるのは普通です。
日本なら特にそうでしょう。
でも、その普通になるまでには、当然ながら最初にリングへ上がった女性たちがいます。
バークはその代表的な一人です。
ここは日本のプロレスファンにはかなり重要です。
ミルドレッド・バークは1954年に日本を訪れ、女子プロレスの興行を行っています。
つまり、日本の女子プロレス史とも無関係ではありません。
その後、日本では女子プロレスが独自に発展し、全日本女子プロレスなどを経て、世界的にも非常にレベルの高い女子プロレス文化が作られていきます。
今の日本女子プロレスから歴史をさかのぼっていくと、バークの名前が出てくる。
そう考えると、この映画が急に身近に感じられます。
ミルドレッド・バークの人生を語るなら、ジューン・バイヤーズとの試合も外せません。
この二人の試合は、単なるプロレスのタイトルマッチというより、裏側の人間関係や興行上の対立まで絡んだ、かなり生々しい一戦でした。
プロレスは基本的に試合の流れを作って見せる世界です。
ところが人間同士が本当に揉めてしまえば、話は別です。
金、王座、興行、プライド、人間関係。
そういうものが全部リングに入ってくる。
この辺りもバークの人生が映画向きな理由でしょう。
リングの中より、リングの外の方がよほどプロレス的だったりするんですよね。
もちろん、この映画を全部ベタ褒めするつもりはありません。
一番気になるのは、バークの人生に出来事が多すぎることです。
デビューして、男性と闘って、スターになって、結婚して、人間関係が崩れて、女子レスラーたちと巡業して、王座を巡って揉めて、日本にも行く。
もう、とにかく忙しい。
面白い話が出てきたと思ったら、すぐ次の出来事へ進んでしまうところがあります。
「ここ、もうちょっと見たいんだけどな」と思う場面は結構あります。
これは伝記映画にはありがちな問題ですね。
ただ、それだけバークの人生が濃かったということでもあります。
FightDesire的な見方をするなら、やっぱりこの映画はかなり面白いです。
強い女性がいる。
女性同士で本気で組み合う。
男性とも闘う。
鍛えた女性の身体がある。
華やかな衣装もある。
そして、勝ち負けにきちんと意味がある。
女子格闘作品で見たい要素が、かなり入っています。
そこが一番強いです。
架空の「最強女子レスラー」ではない。
本当にこういう女性がいた。
本当に男性とも闘った。
本当に女子プロレスの世界を広げていった。
その事実があるから、リングシーンの見え方が変わります。
『Queen of the Ring』は、女子プロレス映画としてかなり完成度の高い一本です。
プロレスシーンを楽しむだけでもいい。
強い女性を見る映画として楽しんでもいい。
女子プロレスの歴史を知る映画として見てもいい。
どの入り口から見ても、それなりに楽しめます。
そして、女性格闘というジャンルが好きな人なら、ミルドレッド・バークという人物そのものに興味を持つはずです。
女性がリングに上がることすら珍しかった時代に、男性とも闘い、女性とも闘い、自分自身をスターにしていった。
今では女子プロレスは普通に存在しています。
でも、その「普通」を作るまでに、こういう女性がいた。
そこまで知ったうえで見ると、この映画はかなり面白いです。
★★★★★ 5.0 / 5.0
女子プロレス映画、女性格闘映画の中では文句なしにおすすめ。
単に女性レスラーが闘うだけではなく、女子プロレスそのものの歴史まで楽しめる作品です。
そして何より、ミルドレッド・バークが格好いい。
女子プロレスというジャンルが好きなら、一度は見てほしい一本です。
